教科書の扱いを考える

公立の中学校で教えている以上、教科書を如何に効果的に活用していくかは永遠の課題のように思えます。実践的コミュニケーション能力育成と基礎基本の定着の両方が求められる現在の英語教育において、教科書はどのように扱っていけばよいのでしょうか?

「教科書の扱い」という言葉から連想できる活動、キーワードには、以下のようなものがあるように思われます。

True or False, Questions and Answers, 音読、暗唱、教科書「で」教える、訳読、ピクチャーカード、新出単語、文法説明

自分の学校では、NEW HORIZONを使用しています。この教科書は三部構成になっていて、Starting Out, Dialog, Reading for Communicationというページに分かれています。(1年生はPart 1, 2, 3)これらのうち、Starting Outは新出文法事項を導入、練習した後の、文法事項確認のために使っているのみです。次のDialogは、以下のように行っています。

1)新出単語の発音、意味確認

2)教科書の一斉音読、または教科書を閉じてCDを聞く

3)True or False, Questions and Answers

4)重要なところの説明

5)教科書の音読(一斉音読→ペア音読)(時々個人読み)

6)教科書のダイアログの一部を代えて会話の練習

個人的に、訳読だけの授業にならないように努めているつもりですが、訳読、、というか、明示的な文法説明を完全に省くことはしません。議論はあるかもしれませんが、今の自分の担当している生徒たちには、明示的な説明があると、ある程度安心できる部分があるみたいです。

また、音読に関しても、せっかくのダイアログなので、ペアで音読することを最近取り入れました。これは後の、教科書のダイアログの一部を代えて会話の練習という部分にもつながり、個人的に気に入っています。6)の活動は、教科書の内容をパーソナライズする活動で、手軽な自己表現活動として使っています。例えばUnit7-2には好きな映画のジャンルと、好きな映画名を尋ねる文章があるのですが、生徒たちは自分たちが好きなジャンルを言い合ったり、好きな映画名を、英語を用いて楽しく教え合っている様子がうかがえました。

Reading for Communicationについては後日書きます。

プロジェクト型のタスクを試みる

3学期の授業の目標の一つに、「英語を使って意味あるメッセージを伝えつつ、達成感を与える」ということがあります。特に、今学期は、担当クラスで学習者同士が協力して一つのプロジェクトを達成していくようなタスクを設定し、全員の前で、英語を用いてプレゼンテーションすることになりました。

この、プロジェクト型の学習を授業に取り入れた理由は2つあります。1つ目は、英語を用いてメッセージを伝える必然性のある場面を作るということです。2つ目は、学習者同士が協力して、1つの大きなタスクに挑戦することで、達成感を味わう、ということです。自分の中では特に後者の理由の方が強く、ただ漫然と英語の授業を受けるのではなく、学習者同士がタスクについて話し合い、議論を重ね、資料や原稿を自分たちで準備し、協力してプレゼンテーションを完成させる、そして、終わった後の達成感をグループのメンバーと一緒に味わう、といった経験をしてもらいたいと思っています。

これは、自分の、学会での発表と重なる部分があります。時間をかけて準備し、大学や高校の先生方の前でプレゼンテーションをし、様々な質問をいただき、発表を終えた後のあの達成感は何事にも代え難いものだと、学会の発表をされた方なら理解していただけると思います。

具体的な準備の仕方ですが、木下(2003)のLong Term Projectの実践を取り入れて、授業の最後の15分をプロジェクトの時間にあてます。(残りの時間は教科書中心の授業です。)大体1つのプロジェクトに5〜8回の時間をとります。その間に、役割分担、原稿の下書き作り、資料(ポスターや絵など)作り、リハーサルといった作業を経て、最後にグループごとにプレゼンテーション、という流れです。

ちなみに2学期には、1年生では、「世界の中学生の生活を調べよう」と題して、各グループごとに異なった国の中学校生活をしらべ、一枚のポスターを作りました。2年生では、「世界のクリスマスについて調べよう」(ちょうどクリスマス前だったということもあり)と題して、異なった国のクリスマスを調べ、グループでプレゼンテーションをするというタスクを行いました。しかし、このときには、学習者のアウトプットに対して、レベルの高いフィードバックを与えてしまったこと、学習者が難しい表現を簡単に言い換えるようなストラテジーを持っていなかったこと、他のグループの発表を聞く必要性のある状況を作っていなかったため、最後の発表のときに、聴衆が発表者の言うことを理解できない、聴いても聴かなくても学習者は何もする必要がない、という状況に陥りました。

こうした反省をふまえて、今回は、最後の発表時に聴衆が、発表を聴いて、自己表現をしなければいけないようなタスクを設定しました。そのことにより、学習者は聞くことの動機付けを高めることができたらなと思います。

段階的な指導重要性を再認識

公立の中学校で教えていると、生徒の英語のレベルは様々です。一つのスピーキング活動を行う前にも、事前の準備が欠かせないということは、現場の先生方の直感でお分かりいただけるのではないかと思います。

先日、比較級を学習したのですが、比較級の文法事項を明示的に説明した後に、三問ほどの簡単なドリル形式の問題を取り入れました。板書やノートを見ながら2、3分で行う活動なのですが、学習者が自ら取り組まなければいけないこともあり、その後の活動に非常によい好影響を及ぼしたようです。

その後、「○○だろう」という、質問(例:数学と国語ではどちらが簡単?)などの質問を与え、当てはまる方に○をつけさせ、後に、その内容についてペアで話をするというスピーキング活動を取り入れました。この際にもモデルを用いてモデルに倣って話をしたのですが、ある「型」を取り入れることで、学習者の中におちていくものがあったようです。

これらの実践から、やはり、初期段階では、単純な練習から、徐々に段階を挙げていく、sequencing tasksの概念が必要ではないのかと考えさせられました。高島(2005)の分類からは、ドリルで始まり、TOAからTAということになるのかもしれませんが、段階的な指導というのは、全く初期の学習者には重要な意味を持っているのだなあと再確認できました。もちろんTOAやTAの段階に留まらず、Task活動まで持っていけるといいなあという希望はありますが。