佐藤学・岩川直樹・秋田喜代美(1991)「教師の実践的思考様式に関する研究(1)ー熟練教師と初任教師のモニタリングの比較を中心にー」『東京大学教育学部紀要』第30巻, 177-198頁を読みました。

佐藤・岩川・秋田(1991)を読みました。熟練教師と初任教師の実践的思考様式に関する研究です。簡単に言ってしまうと、熟練教師とそうでない教師とでは、考え方にどのような差があるのかを調べた研究です。以下結果のみ簡単にまとめます。

1)熟練教師は授業過程の即興的思考が初任教師よりも豊かである。

2)熟練教師は子どもの学習に敏感であり、問題、意味を解読し、多様な方法を模索しながら実践の問題の解決や理解を行っている。

3)熟練教師は授業者として、観察者として、子どもの立場として、など様々な視点を統合して事実の解釈と判断を行っている。

4)熟練教師は子どもの行動をこれまでの授業展開や時間的な関係、他の子どもとの関連の中で位置づけて理解、判断している。

5)熟練教師は基準の適用ではなく、授業に固有な問題の枠組みを再構成している。

佐藤先生らの研究によると上記の5つが初任教師と熟練教師を分ける要因であることが判明したようです。この5つの指標を以て自分の教師としての態度を振り返ってみると面白いかもしれません。 ちなみに僕の場合、授業中にこれらの5つを意識的・無意識的に行えているとは思えません。しかしながら、新採用時代の特別支援学校での経験、そして、今年度CELESで発表したアクション・リサーチを通して、2)3)4)を多少たりとも意識するようになったように思います。

特別支援学校では個に焦点を当てた教育が行われます。僕が経験した範疇では、教師は多くても二、三人のみを担当します。個人に合わせたケース会議が頻繁に行われます。成績は普通学校のように数値ではなく、文章で表されるものが多いように思います。このような状況で教師は、担当する学習者のことを深く理解することを求められます。理解しようとするためには、対象の学習者をよく観察しなければいけません。「こういう介入をするとこの子はどのような反応をするのだろう」「何故今この子はこういう反応をしているのだろう」などと常に学習者の様子を理解・解釈しようと努めるようになります。こういった姿勢は恥ずかしながら、特別支援の経験を通して初めてきちんと培われるようになってきたように思います。

話はかわりますが、CELESで発表したアクション・リサーチでは教師による授業記録をデータの一つとして使用しました。授業記録を書くためには教室内で起こっている現象、学習者の様子をしっかりと観察しないと、「今日の授業はよかった、だめだった」程度の記述しか残せません。授業中、「今日の記録には何を残せるのか」といった視点で学習者や教室内の現象を見ていると、授業中の学習者の様子に自然と目がいくようになります。学習者の様子を観察していると今度は「彼(女)らは何を思って今このような行動をとっているのだろう」と考えるようになります。このような視点は授業者としての視点と観察者としての視点、そして子どもの立場に立とうとする姿勢ができてきたということになるように思います。「授業記録を書かなければいけない」という課題を自分に与えることで、必然的に2)3)4)をより強く意識し出したように思います。

この二つの事例で言えることは「書く」と言う行為が自分を成長させてくれたように思います。授業時の学習者の様子、教室内での現象を描写すること、起こった現象に対する教師自身の推論、解釈を記録していくというタスクが、ショーンの提唱する「行為についての省察(reflection-on-action)」が促されたのかなと思います。もしそうであれば、教師は「書く」という行為を続けること、つまりは反省的な実践を積み重ねていくことで熟練教師への階段を上っていくのかもしれません。

文献はこちらから無料でDLできます。

佐藤学・岩川直樹・秋田喜代美(1991)「教師の実践的思考様式に関する研究(1)ー熟練教師と初任教師のモニタリングの比較を中心にー」『東京大学教育学部紀要』第30巻, 177-198頁 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000197584

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