Suzuki, N. (2019). Needs Analysis for Developing a Theme-Based Language Unit for Students at the National Institute of Technology 早稲田大学大学院教育学研究科紀要別冊, 26(2), 163–178.

本研究は、高専生が専門科目の授業でどのような英語使用場面が求められているのかを調査した論文。研究課題は以下の通り。

(1)高専生が専門科目でどのようなタスクを英語で行う必要があるか
(2)教師や高専生はそれらのタスクを行うことについてどのように思っているか
(3)英語の授業で行われるべきトピックにはどのようなものがあると教師や高専生は認識しているか
(4)本研究のニーズ分析を踏まえてdのようなテーマベースの単元が提案可能か

このうち、(1)〜(3)について考察。

研究協力者は、工学部のある学部に所属する4名の専門教員、2名の学生(専攻科生)と3名の卒業生。また、質問氏調査として本科5年生27名と2年生37名を対象。

4名の専門教員には、質問紙調査において英語で行っている授業について、例えば、学生は授業のどのような点で英語を使用する必要があるか等について尋ねた。そして、どの英語のスキル(4技能+語彙、文法)が必要とされているかについて尋ねた。これらの質問は6件法で実施。また、質問紙の後にインタビューも実施。インタビューでは、質問紙調査の内容に加えて、英語教育に対する認識について、どのようなトピックが学生にふさわしいか、どのような英語の支援学生に必要かなどを話し合われた。

また、2名の専攻科生と卒業生にも同様の質問紙調査を行った。その後インタビューを行ったが、英語で授業で対処が求められるトピックやトピックについての認識も調査された。

さらに、本科5年生および2年生には、英語のスキルについての認識について6件法で質問紙調査が行われた。また、興味を感じられるトピックについて2つ書くように求められた。

これらのデータを量的・質的に分析した結果、以下のことが明らかになった。

課題1:高専生が専門科目でどのようなタスクを英語で行う必要があるか

専門教員が最も重要であると考えたスキルはリーディングで、次いでライティングと語彙が挙げられた。具体的なタスクとしては、以下のものが挙げられた。

リーディング:研究論文を読むこと、英語で専門科目についてのテキストを読むこと、実験の設備に関するマニュアルを読むこと、部品の特性を理解するためのデータシートを読むこと

ライティング:国際会議や卒業研究のアブストラクトを書くこと、卒業研究の図(chart)のタイトルや説明を英語で書くこと

リスニング・スピーキング:会議でプレゼンテーションを行うこと、Q&Aセッションでのやりとりを行うこと

学習者が重要視しているトピックについて、5年生はリーディングを最も重要視し、次いで語彙やスピーキングが挙げられた。2年生の場合も最も重要視されているのはリーディングで、次いでスピーキングや語彙が挙げられた。

課題2:教師や高専生はそれらのタスクを行うことについてどのように思っているか

リーディングについては、専門科目の教材を日本語に翻訳することが求められているという報告が見られた。また、その際、学生の中には翻訳するための文法的知識が不足していることを懸念する報告が見られた。また、内容理解にはL1での知識が足場掛け(scaffolding)として機能しているという意見が報告された。

ライティングのアブストラクト作成については、実際に書かれたアブストラクトを数種類提示し、構造のパターンを発見させる方法が報告されたり、高専を卒業した学生からは、修士や博士の学生の支援によって自身のアブストラクトが洗練されていくという過程が報告された。

課題3:英語の授業で行われるべきトピックにはどのようなものがあると教師や高専生は認識しているか

英語の授業で扱われるべきトピックについては、2年生、5年生共に学生の研究分野という声が最も多く見られることが報告された。

以上を踏まえて、以下考察。

本研究で扱われた内容は、高専生が高専の中で求められる英語使用場面の調査である。本研究で挙げられた言語使用場面は、実際に自分が調査を行った中でもよく聞かれた内容であり、場所は違えど、高専内部で求められる英語使用場面の共通点が見えたという点で興味深かった。

また、教師と学生の認識の違いも面白い。両者ともに、高専の授業に於いて、リーディングと語彙が重要なスキル(語彙をスキルと言うかどうかはさておき)であると認識しているが、教員の方はスピーキングのスキルをほとんど重要視していない(M=1.5, SD=0.5)のがよく分かる。一方で、低学年の学生はスピーキングをリーディングと変わらないくらい重要視し(M=5.24, SD=0.79)、5年生は程度も差こそあれ、教員よりも高い割合でスピーキングを重視している様子がデータから見える(M=4.22, SD=1.42)。SuzukiはESPの授業におけるプレゼンの必要性から来ている可能性があると指摘しているが、プレゼンを行うことになっているにも関わらず教員のスピーキングに対する認識が低いというのはなぜなのか興味深い。

高専は、技術者を養成するという明確な目標があるにも関わらず、これまで技術者にどのような現ご使用が求められるのか、体系的な研究があまり行われてきていなかったのではないかと個人的に考えている。実際、先行研究を色々探しても、高専生が将来求められる英語使用場面を調査した研究は中々見当たらない。そういった意味で、本研究は、高専内部のニーズ分析とはいえ、高専生の英語使用場面を知るための一つの資料として有用である。

本研究をベースに、実際に学生がエンジニアになった後どのような場面で英語を使う必要があるかも合わせて調査されると、ESP的なコースを実際に高専で組む際に有益な資料になり得るように思われる。