リアクション・ペーパー

最近とある授業でずっとリアクション・ペーパーを書いてもらっています。100字以上という制限つきで学生の皆さんには少し負担をかけてしまっているかもしれませんが、いただいているこちらとしては勉強になることばかりで、大変感謝しています。

色々な立場、職場で教壇に立って、10年を超えました。一通りの指導の勉強や経験はしてきたつもりですが、学生全員と私が100%満足できた授業というのは1回もないような気がします。正直、授業時間になったら教室へ行き、一通り授業をこなし、終わったら職員室や研究室に戻るという過程だけをただ繰り返すだけならば、授業について悩むことなんて一切ないでしょう(そんな先生いないと思いますが)。一応「外国語教育教員/研究者」としてご飯を食べている以上、自分がよい授業ができなければ話にならないというのは常日頃思っていまして、それが今の実践研究への興味・関心につながったのかもしれません。

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終わりました

第43回中部地区英語教育学会が無事終わりました。運営にご尽力いただきました先生方、学生さん本当にありがとうございました。また、大変素晴らしい先生方や新進気鋭の大学院生さんたちと同時間に発表になったにも関わらず、私の発表を聞きにきてくださった皆様、本当にありがとうございました。おかげさまで今年も学会内外で楽しく充実した時間を過ごすことができました。

取り急ぎ本日のハンドアウトをアップロードしました。こちらのリンクからご覧いただけます。

藤田卓郎(2013)「TBLTのフレームワークを活用した英語授業に対する動機づけを高めるための実践:職業高校生を対象としたアクション・リサーチ」第43回中部地区英語教育学会

http://takuro-fujita.com/publication/2013celes.pdf

 

 

ミニプロジェクト

先日、時間に余裕があったので、投げ込み的になってしまいましたが、授業で調査型のプロジェクトを実施しました。全二時間(40分×2)で、手法は以下の通りです。

1時間目:

① foodに関する質問10問に対して自分の意見を述べる

What kind of food do you like?

What food do you like?

Which restaurant would you recommend ?

Which ramen restaurant would you recommend? など

② 10の質問の中から教師にしていされた質問を1つ選び、その質問をクラス全員にアンケートをとる

③ アンケートの結果をグラフと英文でまとめる。

2時間目:

① ペアを作る。

② 聞き手と話し手に分かれ、話し手が発表する。

③ 聞き手が移動し、発表を聞く。話し手は変わらない。

④ 全員分の発表を聞き終わったら、話し手と聞き手を交代し、②と③を続ける

備考

1時間目の質問の意味が把握しきれない学習者がいたので、日本語での解説を加えました。また、自分の意見を述べる際には、I like ○○のように答え方を示し、○○の部分だけを答えればよいようにしました。アンケートをとる段階では「日本語で聞いたら減点します」と指導しました。この点については前向きな指導を心がけることも考えましたが、一律に「だめなものはだめ」とズバっと、しかし、サラッと言ってしまった方がシンプルでよいと考えた上で行いました。また、発表原稿をまとめる際には、モデルを与えて、モデルの一部を変えれば原稿が出来上がるようにしました。

結果と感想

正直、このようなプロジェクトを行うこと自体が難しいかもしれないと考えていましたが、学習者達は自分たちの身近な事柄について自分の考えを表出する場を持つことができて、日本語ではありますが、質問に答える段階で盛り上がっていました。アンケートを英語で行う際にも型通りではありますが、英語を用いて活動することができていました。「クラス全員に聞く」とすることで、普段あまり話をしないであろう学習者とも、一言ではあっても話す機会を持つことができていました。まとめの際にはグラフを入れることで、発表時に「英語だけでは分かりづらかったけれども、グラフがあったおかげで内容が分かった」といった声を聞くことができました。また、グラフを作ることに結構熱心になっており、集中してまとめをすることができていました。発表時には、全体の前で発表することも考えたのですが、そうするとせっかく準備した原稿を発表する機会が一度だけになってしまうので、task repetitionが可能になるようにペアで行いました。その結果、発表の機会が4,5回ほどになり、同じタスクを数回行うことができました。

この活動を通して僕は今まで自分は何をしていたのだろうという気持ちにさせられました。勝手に「この活動はできないかもしれない」と決めつけてしまっていた自分を反省しなければいけません。今回のプロジェクトでは彼らがプロジェクトをこなせるようにいくつかの支援を行いました。質問の内容を日本語で解説したり、質問の答え方を与えたり、発表原稿のモデルを与えたり、といった支援です。型通りの発表になってしまうという批判は承知の上ですが、型通りであっても、英語を使って他の学習者の意見を聞いて、まとめて発表することができた、という点を僕は評価したいと思います。英語が決して得意ではない学習者が多い中でも、こちらが支援を工夫することで、彼ら自身ではできないことができるようになる、そんな経験を身を以て体験することができました。マジメに、そして意欲的に取り組んでくれた学習者に感謝です。

また、活動後に学習者にアンケートをとりましたが、その中には「他の人の意見を知れて面白かった」という声がありました。やはりある質問に対して、他の人の意見を聞くことは、自分の知らないことが知れるのでとても楽しいようですね。僕も質問を答える活動中に、学習者がおすすめのrestaurantを色々と話しているのを聞くのは、10代の学生がどのようなものを好んでいるのかを知れたという点でとても面白かったです。この経験から、学習者は他の学習者とよい関係を持ちたいという、関係性の欲求に訴えることで、学習者が取り組みたいと思うような活動を作ることができるのではないかという考えに至りました。もう一つ、英語「で」学ぶ、という表現がよく使われますが、今回のようなプロジェクト活動は、「他の学習者の考えを調査して、その内容をまとめて発信する」という点においては、「英語で「で」学ぶ」が達成できたのではないかなと思います。英語そのものを学びながらも時にはこのような英語で学ぶ機会をもっと授業に取り入れたいなと考えています。

上記のような要素を取り入れようとすると、その先には、TBLTやTSLT (task-supported language teaching)という言葉が見えてくるように思います。taskに関しては、どのようなタスクが第二言語習得に効果的か、どのような指導法を行うことで学習者のperformance向上が可能になるか、taskを用いたときの特定の言語形式の取得について、などが研究対象として挙げられます。そのような研究は指導法の効果を測定する点においてとても重要なことには間違いありません。ただ、僕はこれからしばらくは、TBLTと学習者の動機の関係を見れたらいいなと考えています(そしてそれは多分現任校において比較的重要な意味を持つのではないかなと考えています)。習得云々は必要な要素であることは本当に間違いないと思いますが、それよりも僕が現任校で大事にしたいのは、如何に学習を楽しんで行うことができるかです。授業が苦ではない、英語ならがんばろう、やろう、と学習者が思ってくれるような授業、そんな授業をまずは追求していきたいと考えています。

正直、赴任当初はどうなるかと思っていましたが、教科書の扱い、やる気を高める手法、どうすれば学習者が活動に取り組めるか、少しずつではありますが、見えてくるようになってきました。