研究者がTwitterで語ればネットはもっと面白くなる

ここ数日研究論文を読んで疑問に思ったことをツイッターに投稿し、著名な方々からアドバイスをいただき、大変感謝しています。また、反対に若い大学院生が研究に関することをツイートし、そのツイートから議論をすることも多々あります。

僕の周りの知人、友人はFacebook, mixi等のSNSを頻繁に利用している方もいますが、ツイッターとなると意外使用者がにいないのが実情で、なぜかなと思っています。SNSというと、「今日何食べた」などの気軽な投稿がメインになり、それはそれで楽しいものですが、せっかく距離感を気にせずに人と「つながる」ことが出来るツールなのですから、カジュアルトークだけではもったいないなと感じています。

僕がツイッターでフォロー(登録)している人の流れを見ていると、

1)研究関連のツイートをする
2)ツイートを元に議論が行われる
3)議論されたツイートをまとめる

という一連の流れによってその場限りの議論で終わらずに、後からでも参考できるようになっています。ツイッターのまとめには主にtogetterというサイトを使って、@tam07pb915さんがメインとなってまとめを行ってくれています。まとめを見るだけでも論文を読むだけでは見えて来にくい著者の考えが分かるので大変勉強になります。

ツイッターの良いところはその道の第一人者、著名な方とも気軽につながることができることです。Facebookやmixiは登録するのに「申請」が必要で、基本的には自分と全くつながりがない人とは関係が出来にくいように思います。その点ツイッターは単にユーザーをフォロー(登録)するだけで相手方の了承は特に必要ありませんので、気軽につながることができます。

「ツイッターのまとめじゃなくてもブログや論文よめばいいじゃない」という声もあると思います。もちろん論文を読むことは研究の基本です。ブログも著者の考えをある程度まとまった量の文章で読むことが出来る、最新の情報を手に入れることが出来るという点で非常に重宝します。しかしツイッターの良いところは、双方向のやりとりがブログやSNSよりも気軽に出来る点です。したがって、togetterによってまとめられたサイトは一種の「対談本」のような形になり、その道の第一人者達がどのようなことを考えているのかを気軽に知ることが出来ます。時には関連した論文がリンク付きで紹介されることもあり、情報収集の手段としては非常に有効活用できるものになっていると思います。

ツイッターではもちろんカジュアルトークも多々見られますが、せっかく人と人とが気軽につながることができる場が提供されているのですから、大いに研究について語ってほしいなと考えています。特に若い方、大学生や大学院生の方々がどんどんツイートして議論が勃発すると面白いですね。もちろん研究のメインとしてツイッターを使うと言うことは現状あり得ないと思いますし、何でもかんでも「教えて」ではだめだとも思います。しかしながら、気軽なディスカッションを行う手段としてツイッターは非常に有効なツールだと思います。

みなさん、ツイッターでもっと語りましょう。そうすればネットはもっと面白くなると思います。

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ミニプロジェクト

先日、時間に余裕があったので、投げ込み的になってしまいましたが、授業で調査型のプロジェクトを実施しました。全二時間(40分×2)で、手法は以下の通りです。

1時間目:

① foodに関する質問10問に対して自分の意見を述べる

What kind of food do you like?

What food do you like?

Which restaurant would you recommend ?

Which ramen restaurant would you recommend? など

② 10の質問の中から教師にしていされた質問を1つ選び、その質問をクラス全員にアンケートをとる

③ アンケートの結果をグラフと英文でまとめる。

2時間目:

① ペアを作る。

② 聞き手と話し手に分かれ、話し手が発表する。

③ 聞き手が移動し、発表を聞く。話し手は変わらない。

④ 全員分の発表を聞き終わったら、話し手と聞き手を交代し、②と③を続ける

備考

1時間目の質問の意味が把握しきれない学習者がいたので、日本語での解説を加えました。また、自分の意見を述べる際には、I like ○○のように答え方を示し、○○の部分だけを答えればよいようにしました。アンケートをとる段階では「日本語で聞いたら減点します」と指導しました。この点については前向きな指導を心がけることも考えましたが、一律に「だめなものはだめ」とズバっと、しかし、サラッと言ってしまった方がシンプルでよいと考えた上で行いました。また、発表原稿をまとめる際には、モデルを与えて、モデルの一部を変えれば原稿が出来上がるようにしました。

結果と感想

正直、このようなプロジェクトを行うこと自体が難しいかもしれないと考えていましたが、学習者達は自分たちの身近な事柄について自分の考えを表出する場を持つことができて、日本語ではありますが、質問に答える段階で盛り上がっていました。アンケートを英語で行う際にも型通りではありますが、英語を用いて活動することができていました。「クラス全員に聞く」とすることで、普段あまり話をしないであろう学習者とも、一言ではあっても話す機会を持つことができていました。まとめの際にはグラフを入れることで、発表時に「英語だけでは分かりづらかったけれども、グラフがあったおかげで内容が分かった」といった声を聞くことができました。また、グラフを作ることに結構熱心になっており、集中してまとめをすることができていました。発表時には、全体の前で発表することも考えたのですが、そうするとせっかく準備した原稿を発表する機会が一度だけになってしまうので、task repetitionが可能になるようにペアで行いました。その結果、発表の機会が4,5回ほどになり、同じタスクを数回行うことができました。

この活動を通して僕は今まで自分は何をしていたのだろうという気持ちにさせられました。勝手に「この活動はできないかもしれない」と決めつけてしまっていた自分を反省しなければいけません。今回のプロジェクトでは彼らがプロジェクトをこなせるようにいくつかの支援を行いました。質問の内容を日本語で解説したり、質問の答え方を与えたり、発表原稿のモデルを与えたり、といった支援です。型通りの発表になってしまうという批判は承知の上ですが、型通りであっても、英語を使って他の学習者の意見を聞いて、まとめて発表することができた、という点を僕は評価したいと思います。英語が決して得意ではない学習者が多い中でも、こちらが支援を工夫することで、彼ら自身ではできないことができるようになる、そんな経験を身を以て体験することができました。マジメに、そして意欲的に取り組んでくれた学習者に感謝です。

また、活動後に学習者にアンケートをとりましたが、その中には「他の人の意見を知れて面白かった」という声がありました。やはりある質問に対して、他の人の意見を聞くことは、自分の知らないことが知れるのでとても楽しいようですね。僕も質問を答える活動中に、学習者がおすすめのrestaurantを色々と話しているのを聞くのは、10代の学生がどのようなものを好んでいるのかを知れたという点でとても面白かったです。この経験から、学習者は他の学習者とよい関係を持ちたいという、関係性の欲求に訴えることで、学習者が取り組みたいと思うような活動を作ることができるのではないかという考えに至りました。もう一つ、英語「で」学ぶ、という表現がよく使われますが、今回のようなプロジェクト活動は、「他の学習者の考えを調査して、その内容をまとめて発信する」という点においては、「英語で「で」学ぶ」が達成できたのではないかなと思います。英語そのものを学びながらも時にはこのような英語で学ぶ機会をもっと授業に取り入れたいなと考えています。

上記のような要素を取り入れようとすると、その先には、TBLTやTSLT (task-supported language teaching)という言葉が見えてくるように思います。taskに関しては、どのようなタスクが第二言語習得に効果的か、どのような指導法を行うことで学習者のperformance向上が可能になるか、taskを用いたときの特定の言語形式の取得について、などが研究対象として挙げられます。そのような研究は指導法の効果を測定する点においてとても重要なことには間違いありません。ただ、僕はこれからしばらくは、TBLTと学習者の動機の関係を見れたらいいなと考えています(そしてそれは多分現任校において比較的重要な意味を持つのではないかなと考えています)。習得云々は必要な要素であることは本当に間違いないと思いますが、それよりも僕が現任校で大事にしたいのは、如何に学習を楽しんで行うことができるかです。授業が苦ではない、英語ならがんばろう、やろう、と学習者が思ってくれるような授業、そんな授業をまずは追求していきたいと考えています。

正直、赴任当初はどうなるかと思っていましたが、教科書の扱い、やる気を高める手法、どうすれば学習者が活動に取り組めるか、少しずつではありますが、見えてくるようになってきました。

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『英語教育ブログ』みんなで書けば怖くない!第4回「英語教育この1冊」

英語教育2.0 anfieldroadさんの企画、『英語教育ブログ』みんなで書けば怖くない!第4回「英語教育、この1冊」に参加したいと思います。先日twitterでも活発なやり取りがされていてとても興味深かったのですが、今回ブログの投稿として色々な英語教育関係者のまとまった意見が聞けること、とても楽しみにしています。僭越ながら僕も参加させて頂きます。

さて、英語教育、SLAにおいて僕の知っている限りでも面白い本、刺激的な本はたくさんありますが、今回はあえて現場の教師という視点から「この一冊」を選ばせてもらいました。(研究面に関してはきっと他の先生方が面白い本を推薦してくださるはずです。)僕が推す「この一冊」は

田中武夫・田中知聡(2009)『英語教師のための発問テクニックー英語授業を活性化するリーディング指導ー』

です。山梨大学の田中武夫先生が発問についてまとめられた本です。この本を推薦する理由はいくつかありますが、一番の理由は、この本が「教材研究の方法」を解説している本であるからということです。タイトルには『発問テクニック』と銘打っており、発問を行う理由、発問の考え方、発問を中心とした授業展開が解説されていますが、それらの背景を良く読んでみると、「教材研究は文法・語彙の予習だけで終わっていてはもったいない」という提案がされていることが分かります。

例えば、教材研究をする際に、文法の予習をする、語彙をチェックする、意外にどのような観点から教材研究をするでしょうか。普段お忙しい先生だと、「次の授業は最初に○○をして、次に××をして、最後に△△をしよう、時間的にもこのくらいが妥当だろう」というレベルでの教材研究(研究と呼べるかどうかは定かではありません。むしろ「授業の準備」というほうが適切でしょうか)をされる方もいらっしゃるようです(現任校にという意味ではありません。ただ、今まで色々なところで教えてきましたし、様々な英語の先生方と交流させて頂きましたが、その中には上記のような方もいらっしゃったということです)。「ベテランの味」なのかもしれませんが、もう少し腰を据えて教材と向き合いたい、授業と向き合いたいと考えたとき、この本は教材研究の一つの枠組みを示してくれると思います。

僕の地元では「意見・考え」を問う発問を中心とした授業の研究会があり、若手の先生も多く参加されていますが(という僕もまだ「若手」の一人です)、彼らと話していると「この単元でどうやって意見考えを聞けばいいの?」という声をよく聞きます。そのような声を研究会であげると、ベテランの先生方から「教科書を読み込みなさい」という答えをよくいただきました。当時は、文字通り教科書を何回も読んでみたものですが、よい発問が浮かんできませんでした。何が足りないのかなと考えていたのですが、『発問テクニック』を読んで教材の「見方」というか、どのような視点をもって教材を読み込んで分析していくべきかが理解でき、教材を読み込むということがどのようなことかを理解できたように思えます。

この本では教材を解釈する視点として、文法面、語彙面を除いて少なくとも6点提案されています。その6点が何かと言うことは本書を読んでいただくことにしましょう。僕は今までこの6点すべてを念頭において教材研究をしていたと胸をはって言える自信は全くありません。そういった意味ではまだ若い(?)時期にこの本に出会えて、英語教師としてとても幸せだったと思っています。現在はこの方法で教材を分析してから狙いを考えて、授業で取り扱う一つ一つの活動を考えるようにしています。全てが成功しているとはもちろん言えませんが、毎回授業で学習者がどのような反応をするかな、と授業が楽しみになってきているように感じます。

本書は現在英語教育に携わっている先生方みなさんにお勧めなのですが、特にお勧めする層としては、以下の方です。
① 新採用、または経験の浅い英語の先生
② 教育実習を控えた大学生、大学院生
③ これまでの文法・語彙解説一辺倒の授業を変えたいと考えている先生方

特に20代の英語教師の方にはぜひ読んでいただきたいと思います。いわゆる実践本にありがちな「派手な技」はありません。しかしながら、この本を読んで実践することで着実に「授業の基礎」「教材研究の基礎」を身につけられるように思います。

 

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