Takuro について

福井高専一般科目教室准教授

LET中部大会@名古屋

11月30日、12月1日にかけて第80会LET中部大会に参加してきました。今回もたくさんの新しい先生方との出会い、先生方との交流、新しい知識の取得ができてとても充実していました。

今回はまず、前田啓朗先生と水本篤先生方達の統計や研究手法に関する講演、シンポジウムを目標に参加しました。発表者の方々は全員が統計のエキスパートで、かつものすごく分かりやすく説明してくださり、大変勉強になりました。分かりやすい説明というのは本当に分かっていないとできないもので、僕なんかが時折質問メールを送ってくださる学生さんたちに統計のお話をしようと思っていてもどうしても難しい言葉の羅列になってしまいがちです。中々理解してもらうのに苦労するのですが、今回の先生方のご発表は平易な言葉で話題を絞ってお話ししていただいたため、僕自身本当に勉強になりました。

帰りの電車の中、電車待ちの時間に復習を兼ねて紹介していただいた文献の一つを読んでみましたが、講演で聞いたお話のベースがあるおかげでかなりスムーズに頭にいれることができました。多分講演を聞かずに文献だけ読んでも、ピンとこなかったところも多かったでしょう。そういった意味では、論文を読むことは基本ですが、直接会ってお話を聞いて、チャンスがあれば質問させていただいたり、議論させていただいたりすることは本当に大切だなと思います。理解度が全然違うのでこれからもこの習慣は続けようと思います。

また、自由研究発表では、主に知り合いの大学院生の方々の研究発表を聞かせていただきました。内容がとても緻密で、まさに「研究」という、さすがD課程、またはD課程を目指す学生さんだと脱帽しました。彼らの発表はいわゆる「基礎研究」なので、今すぐ教育的に生かされる種の研究ではありません。しかし、「基礎研究」がどんどん蓄積され、収束されていくことで、新たな知見が生まれ、さらに研究が積み重なることで教育的な示唆をもつようになります。そういった意味で彼らは未来の英語教育に投資してくれていると考えることもできます。このような研究は僕のような立場の人間からはまず出てこないと思っているので、本当に尊敬します。

今回もたくさんの刺激をいただきました。また、いつもですが、他の研究者の方々、大学院生の方と比べると自分が如何に読めていないかを痛感します。身と心をしっかりと引き締めて一つ一つ着実にこなしていきたいと思います。

研究者がTwitterで語ればネットはもっと面白くなる

ここ数日研究論文を読んで疑問に思ったことをツイッターに投稿し、著名な方々からアドバイスをいただき、大変感謝しています。また、反対に若い大学院生が研究に関することをツイートし、そのツイートから議論をすることも多々あります。

僕の周りの知人、友人はFacebook, mixi等のSNSを頻繁に利用している方もいますが、ツイッターとなると意外使用者がにいないのが実情で、なぜかなと思っています。SNSというと、「今日何食べた」などの気軽な投稿がメインになり、それはそれで楽しいものですが、せっかく距離感を気にせずに人と「つながる」ことが出来るツールなのですから、カジュアルトークだけではもったいないなと感じています。

僕がツイッターでフォロー(登録)している人の流れを見ていると、

1)研究関連のツイートをする
2)ツイートを元に議論が行われる
3)議論されたツイートをまとめる

という一連の流れによってその場限りの議論で終わらずに、後からでも参考できるようになっています。ツイッターのまとめには主にtogetterというサイトを使って、@tam07pb915さんがメインとなってまとめを行ってくれています。まとめを見るだけでも論文を読むだけでは見えて来にくい著者の考えが分かるので大変勉強になります。

ツイッターの良いところはその道の第一人者、著名な方とも気軽につながることができることです。Facebookやmixiは登録するのに「申請」が必要で、基本的には自分と全くつながりがない人とは関係が出来にくいように思います。その点ツイッターは単にユーザーをフォロー(登録)するだけで相手方の了承は特に必要ありませんので、気軽につながることができます。

「ツイッターのまとめじゃなくてもブログや論文よめばいいじゃない」という声もあると思います。もちろん論文を読むことは研究の基本です。ブログも著者の考えをある程度まとまった量の文章で読むことが出来る、最新の情報を手に入れることが出来るという点で非常に重宝します。しかしツイッターの良いところは、双方向のやりとりがブログやSNSよりも気軽に出来る点です。したがって、togetterによってまとめられたサイトは一種の「対談本」のような形になり、その道の第一人者達がどのようなことを考えているのかを気軽に知ることが出来ます。時には関連した論文がリンク付きで紹介されることもあり、情報収集の手段としては非常に有効活用できるものになっていると思います。

ツイッターではもちろんカジュアルトークも多々見られますが、せっかく人と人とが気軽につながることができる場が提供されているのですから、大いに研究について語ってほしいなと考えています。特に若い方、大学生や大学院生の方々がどんどんツイートして議論が勃発すると面白いですね。もちろん研究のメインとしてツイッターを使うと言うことは現状あり得ないと思いますし、何でもかんでも「教えて」ではだめだとも思います。しかしながら、気軽なディスカッションを行う手段としてツイッターは非常に有効なツールだと思います。

みなさん、ツイッターでもっと語りましょう。そうすればネットはもっと面白くなると思います。

ミニプロジェクト

先日、時間に余裕があったので、投げ込み的になってしまいましたが、授業で調査型のプロジェクトを実施しました。全二時間(40分×2)で、手法は以下の通りです。

1時間目:

① foodに関する質問10問に対して自分の意見を述べる

What kind of food do you like?

What food do you like?

Which restaurant would you recommend ?

Which ramen restaurant would you recommend? など

② 10の質問の中から教師にしていされた質問を1つ選び、その質問をクラス全員にアンケートをとる

③ アンケートの結果をグラフと英文でまとめる。

2時間目:

① ペアを作る。

② 聞き手と話し手に分かれ、話し手が発表する。

③ 聞き手が移動し、発表を聞く。話し手は変わらない。

④ 全員分の発表を聞き終わったら、話し手と聞き手を交代し、②と③を続ける

備考

1時間目の質問の意味が把握しきれない学習者がいたので、日本語での解説を加えました。また、自分の意見を述べる際には、I like ○○のように答え方を示し、○○の部分だけを答えればよいようにしました。アンケートをとる段階では「日本語で聞いたら減点します」と指導しました。この点については前向きな指導を心がけることも考えましたが、一律に「だめなものはだめ」とズバっと、しかし、サラッと言ってしまった方がシンプルでよいと考えた上で行いました。また、発表原稿をまとめる際には、モデルを与えて、モデルの一部を変えれば原稿が出来上がるようにしました。

結果と感想

正直、このようなプロジェクトを行うこと自体が難しいかもしれないと考えていましたが、学習者達は自分たちの身近な事柄について自分の考えを表出する場を持つことができて、日本語ではありますが、質問に答える段階で盛り上がっていました。アンケートを英語で行う際にも型通りではありますが、英語を用いて活動することができていました。「クラス全員に聞く」とすることで、普段あまり話をしないであろう学習者とも、一言ではあっても話す機会を持つことができていました。まとめの際にはグラフを入れることで、発表時に「英語だけでは分かりづらかったけれども、グラフがあったおかげで内容が分かった」といった声を聞くことができました。また、グラフを作ることに結構熱心になっており、集中してまとめをすることができていました。発表時には、全体の前で発表することも考えたのですが、そうするとせっかく準備した原稿を発表する機会が一度だけになってしまうので、task repetitionが可能になるようにペアで行いました。その結果、発表の機会が4,5回ほどになり、同じタスクを数回行うことができました。

この活動を通して僕は今まで自分は何をしていたのだろうという気持ちにさせられました。勝手に「この活動はできないかもしれない」と決めつけてしまっていた自分を反省しなければいけません。今回のプロジェクトでは彼らがプロジェクトをこなせるようにいくつかの支援を行いました。質問の内容を日本語で解説したり、質問の答え方を与えたり、発表原稿のモデルを与えたり、といった支援です。型通りの発表になってしまうという批判は承知の上ですが、型通りであっても、英語を使って他の学習者の意見を聞いて、まとめて発表することができた、という点を僕は評価したいと思います。英語が決して得意ではない学習者が多い中でも、こちらが支援を工夫することで、彼ら自身ではできないことができるようになる、そんな経験を身を以て体験することができました。マジメに、そして意欲的に取り組んでくれた学習者に感謝です。

また、活動後に学習者にアンケートをとりましたが、その中には「他の人の意見を知れて面白かった」という声がありました。やはりある質問に対して、他の人の意見を聞くことは、自分の知らないことが知れるのでとても楽しいようですね。僕も質問を答える活動中に、学習者がおすすめのrestaurantを色々と話しているのを聞くのは、10代の学生がどのようなものを好んでいるのかを知れたという点でとても面白かったです。この経験から、学習者は他の学習者とよい関係を持ちたいという、関係性の欲求に訴えることで、学習者が取り組みたいと思うような活動を作ることができるのではないかという考えに至りました。もう一つ、英語「で」学ぶ、という表現がよく使われますが、今回のようなプロジェクト活動は、「他の学習者の考えを調査して、その内容をまとめて発信する」という点においては、「英語で「で」学ぶ」が達成できたのではないかなと思います。英語そのものを学びながらも時にはこのような英語で学ぶ機会をもっと授業に取り入れたいなと考えています。

上記のような要素を取り入れようとすると、その先には、TBLTやTSLT (task-supported language teaching)という言葉が見えてくるように思います。taskに関しては、どのようなタスクが第二言語習得に効果的か、どのような指導法を行うことで学習者のperformance向上が可能になるか、taskを用いたときの特定の言語形式の取得について、などが研究対象として挙げられます。そのような研究は指導法の効果を測定する点においてとても重要なことには間違いありません。ただ、僕はこれからしばらくは、TBLTと学習者の動機の関係を見れたらいいなと考えています(そしてそれは多分現任校において比較的重要な意味を持つのではないかなと考えています)。習得云々は必要な要素であることは本当に間違いないと思いますが、それよりも僕が現任校で大事にしたいのは、如何に学習を楽しんで行うことができるかです。授業が苦ではない、英語ならがんばろう、やろう、と学習者が思ってくれるような授業、そんな授業をまずは追求していきたいと考えています。

正直、赴任当初はどうなるかと思っていましたが、教科書の扱い、やる気を高める手法、どうすれば学習者が活動に取り組めるか、少しずつではありますが、見えてくるようになってきました。