堀正岳(2018).『知的生活の設計ー「10年後の自分」を支える83の戦略』KADOKAWA

ちょっと前に出版されてkindleで買った本。内容が気に入ったので、再度紙でも購入。今回改めて再読したので3回読んだことになる。僕にしては珍しく3回も読んだので、考えたことをメモしておこうと思う。

本書は、現代において知的生活を行うための考え方とノウハウが5つの観点から書かれている。5つの観点とは、

  • 自分の「積み上げ」の設計
  • パーソナルスペースの設計
  • 発信の場所の設計
  • 知的ファイナンスの設計
  • 小さなライフワークの設計

である。端的に言えば、将来何を成し遂げたいか、どのような地点に到達したいかを意識して、日々積み重ねていくことを設計していくこと(知的積み上げ)、知的積み上げを行うためのアナログ(書斎等)・デジタル面の環境を整備していくこと(パーソナルスペース)、情報整理と情報発信のための戦略を考えること(発信場所)、自分の知的生活のパターンを意識したり、新分野の開拓にかける時間を設計するなど、小さなライフワークを設計すること、知的生活のための長期的な投資プランを検討すること(知的ファイナンス)についてノウハウが書かれている。

本書に限らず、著者の堀氏の考え方で気に入っているのが、少しずつ「積み上げる」ということである。ここ数年、研究の積み上げがほとんどできていなかったと感じているので余計に気になっていたのかもしれない。積み上げは、たとえ日々のタスクは少量でも、年間や月間に直すと結構な差がつくものである。論文購読を例に出すと、2日に1本読めれば、年間で150本以上読めることになる。1日1本欠かさず読めたら年間で300本を超える論文を読めることになる。1本も読まなければ、1年経っても0本なのである。こう考えると、毎日少しずつ読むことって大事だなあと。そういった日々の積み上げがここ最近ずっとできていなかったことを改めて考えさせられた。

研究に関してはやみくもに読み進めてもダメなので、きちんと「積み上げの設計」をしなきゃいけない。そのためには、何を知りたいのか、何を成し遂げたいかを明確にする必要があり、そのトピックに関連した文献を集めてから読みに入る必要がある。つまり、長期的な戦略を考えて読みの設計をしなきゃいけない。そうなると、アドラー ・ドーレン(1997)の「シントピカル読書」を意識することになる。。。って、書いててこれって研究の基本的なところじゃないかとツッコミが入りそうだけど、自分が日々の忙しさにかまけて基本が疎かになっていたと反省している。

知的積み上げは仕事のことだけじゃなくて、音楽や映画などにも当てはまると堀氏は述べている。堀氏によると、我々は音楽なんかも意外と決まったものしか聴いていないのだと述べており、僕の場合、実際そのとおりだという実感もある。こういった側面まで「積み上げ」と書くとかなり硬い感じになってしまうが、意識して音楽や映画も新しいものに触れていかないと自分がアップデートされていかないということを考えさせられた。

前期も終わりに近づいてきたし、この夏は、今年入ってからの目標であったインプットの夏にしたいなあ。本業では「積み上げ」を意識しつつ、私的な読書の方では新しいものに触れていくという観点で色々と読めるとよい。ということで、積み上げた本はこの夏の課題図書にしようと思っている。特に統計は基礎から学習し直したい。知識をアップデートしたいなあと。あまりこういったものを公開するのもどうかと思うが、ブログに書くことで自分を追い込んで読むための発奮材料としようと思う。