McDonough, K. (2004). Learner-learner interaction during pair and small group activities in a Thai EFL context. System, 32, 207-224

久しぶりの論文レビューとなりました。最近自分が興味を持っている、インタラクションやペアワークの活性化についての研究です。

この論文は、学習者がペアワークやsmall group activity(以下グループワーク)中でインタラクションに参加することが、目標形式の表出の正確さの向上に役立つかを検証しています。インタラクション関係の研究となると、NS-NNSのものが非常に多いように思えますが、この研究は学習者間のインタラクションを調査した点で非常に興味深かったです。

実験参加者はタイの大学生16名。目標形式は条件節(条件のif節の方と仮定法のif節)。タスクはtraffic congestion, deforestation, illiegal loggingなど、タイでの生活環境に関する問題の原因について話す事、異なった解決策の効果について予測しながら条件節を使うようなcontextを生成した(と述べられている)タスクを使用しました。

分析方法の1つとして、インタラクションデータを否定フィードバックと修正アウトプットの観点から分析しました。また、目標形式の正確さを測定するためにプリテストとして3~5つのwarm-up questions、ポストテスト1、ポストテスト2として、条件節と結果または予測が書かれている節を適切にマッチングさせるテスト、そして、1種類の口頭表出テストが行われました。(詳細は論文のほう参照)

結果として以下の事が分かりました。まず、学習者は否定フィードバックの中でも明確化要求を1番使用しており、次いで言い直し(recast)を多く使用し、明示的修正はほとんど使用していませんでした。学習者は教師ではないので、相手の間違いを直したりする役割を持っていないと学習者自身が考えていると思われる事からも想像できうる結果であるように思います。

さらに、学習者をhigh-participationとlow-participationに分類し、学習者のparticipationの観点からテスト結果を分析した結果、high-participationの学習者の方がより目標形式の表出が向上したと述べられています。ただし、この論文におけるhigh-participationの定義が、否定フィードバックや修正アウトプットの量によって成されているため、一般的に使われるparticipationとは意味が異なるように思われます。従って、結果の解釈には十分な注意が必要です。

また、この研究の面白い点は、修正アウトプットをother-initiated modified outputとself-initiated outputに分類して分析し直した点です。その結果、研究中で41例見られた修正アウトプットの約8割がself-initiated modified outputであり、約2割がother-initiated modified outputであったと述べています。さらに、34例見られた学習者間の否定フィードバックの中で、学習者が反応できたのは約2割であったと述べています。従って、学習者はペアワーク中のnegative feedbackを、ほとんど利用できていないことが実証されたことになります。

もしこの結果が一般化できるならば、pair-workの利点としてLongの提唱するインタラクション仮説を背景に持ってくる事が適切ではないということになります。インタラクション仮説は(誤解を恐れず簡略化するならば)インタラクションが、① negotiation of meaningがより理解可能なインプットを促すこと、② 否定フィードバックの表出を促し、それにより言語習得が促進される、と提唱している仮説です(old verとnew verの両方を考慮しています)が、ペアワーク間では、少なくとも否定フィードバックが起こってもそれを上手に利用することができていない訳ですから、インタラクション仮説の内容がそのまま当てはまる訳ではないということになります。

高校でも英語で授業をする事が求められ、よりコミュニケーション主体の活動が求めらているような気がする今日この頃ですが、その基本的な形態の1つであるペアワークを如何に上手に指導できるか、如何に活性化させるかというテーマは、教師にとっての腕の見せ所であり、より深く研究していく必要があると思います。

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