Takuro について

福井高専一般科目教室准教授

福井県英語教育懇話会12月冬季シンポジウム

しばらくブログの更新が滞りました。

さて、今日は福井県の英語教育懇話会冬季シンポジウムに参加してきました。5人の発表者の先生方が音読について発表されました。どの先生方も工夫された音読の指導法を考えられていて、とても勉強になりました。

ディスカッション時に出たお話と個人的に考えたことをまとめて記録しようと思います。

まず、このシンポジウムで話題に上がったことが、なぜ音読をするのかをもっと深く考えなければならないということです。音読のさせ方のテクニックが先行するのではなく、音読をする目的を明確にし、その目的に沿った指導法を考えなくてはいけません。

次に個人的に考えさせられたのは、音読それ自体を目的としないということです。つまり、音読を目標とするのではなく、最終目標として何らかのoutcomeを設定し、そのoutcomeを達成させるためのプロセスとして音読練習をする、という考え方です。この場合、最終的な目標を達成するために音読するわけですから、音読をするための動機づけを高めているということになると言えるように思います。

個人的に思ったことが、音読のお話になると、英語の先生達は自分たちの印象で音読の効果について語る傾向があるように思います。もちろん教師の勘はとても大切だとは思いますが、音読の効果を検証するのであれば実際にデータをとってきちんと量的、質的に分析する必要があると思います。もちろん音読を扱った研究はありますが、まだまだ発展途上のように思います。

具体的には、

音読とは何を指すのか。音読の定義:shadowingや暗唱も音読とするのか

音読の回数、頻度について:1,2回音読してもあまり効果は見られないように思います。

音読の○○に対する効果:○○にはリーディング、スピーキング、速読、文法項目、語彙など

が最低限検証されるべきで、検証されたデータを基にもう一度音読の利点を考えていく必要があるように思います。

福井県英語教育懇話会11月例会

11月19日(土)福井県英語教育懇話会が開かれました。拙いながら「学会発表のメリットとICTを活用した自己研修の方法の紹介」という題目で発表させていただきました。参加して頂いた皆様ありがとうございました。

発表資料を「研究業績」欄に追加しました。

Han and Ellis (2003) 読了 したものの・・・

読了してまとめまで2週間以上かかってしまったHan and Ellis (2003)を本日終わらせた。

Han and Ellis (2003)は、明示的知識、暗示的知識を測定する方法について調査している論文で、主に文法性判断テスト、Oral Production Test、メタ言語的コメントなどの測定方法を計画し、因子分析をかけることによって、どのテストが明示的知識 / 暗示的知識を測定していると考えられるかを検証した。本研究の結果からは、メタ言語的コメントや時間制限ありの文法性判断テストが明示的知識を測定しており、時間制限のない文法性判断テストは、明示的知識と暗示的知識の両方を必要としていることがわかった。

冒頭にも書いたが、この論文は読んでまとめをするまでにかなりの時間がかかってしまった。単に忙しかったということもあるのだが、一つ考えられる原因が、自分が知りたかったことと論文が調べていたことにギャップがあったということである。8月に行われた全国英語教育学会以来、明示的知識、暗示的知識の関係に興味があったのだが、よく考えてみると、自分の興味は「明示的知識の取得とと暗示的知識の取得にはお互いが影響を与えているのか?与えているとしたらそれはどのような関係があるのか?」ということを知りたかったように思う。対してHan and Ellis (2003)では「明示的知識、暗示的知識という二つの異なる知識をどのようなテストを以て測定することができるのか」ということを考えていたように思う。従って、明示的知識と暗示的知識との関係性について述べられているわけではなく、その点が論文を読んでいて「何かが違う」と考えた理由になるように思われる。

一応述べておくが、上記の自分の思いは、この論文の良し悪しとは全く関係がない。単に興味の方向性がずれていたというだけで、明示的知識と暗示的知識の測定方法を知ったり、この分野でどのような研究がされているのかを知るためには有益であるように思われる。