Funano, S.,and Ito, H. (2008). An empirical study on basic requirements for Japanese EFL learners to achieve oral fluency in English. Annual Review of English Language Education, 41-50.

日本人が英語を話せない要因は、メッセージを伝える練習をしていないから、日常生活で英語を話す機会がないからとしている。また、日本人が英語を話す際の問題点として、

① 日本人が英語を話すときには構成概念のあとに日本語に言語化し、その後英語に直すとしている。そのため、英語で考えるのは難しいらしい。

② 日本語はtopic-prominenceで、英語はsubject-prominenceという違い

③ 日本語はhigh context languageで、英語は日本語に比べるとlow context languageである。つまり、日本語は文脈を重視し、文脈から明らかなこと(主語など)は言われないことが多いが、英語は文脈よりも文構造を重視する。

④日本人が英語を話す際には日本語から英語へのmental translationが必要であるとし、mental translationがquickな学習者は流暢に話すことができると仮定している。


研究課題:

“How does the grammatical and lexical competence of Japanese EFL learners contribute to their speaking proficiency in English?” pp.44-45

方法:

参加者は高校2年生62名。テストはスピーキングテストと文法テストとテストを実施。文法テストと語彙テストはそれぞれreceptiveとproductiveなテストを実施。表出テストはpaper and pencilsのテスト(だと思います)。receptive grammarテストは教師が英文を読むのを聞いてそれを英語に直すテスト。

スピーキングテストは3種類。①自己紹介、②4コママンガの説明、③一枚の絵の説明。5段階評価でスピーキングテストを採点。流暢さ、ボリューム、文法的正確さ、態度について。
結果と考察
* receptive > productive (grammar, vocabulary)
* grammarテストの差 > vocabulary テストの差

→ 日本人にとっては語彙よりも文を英語に直すことが難しいことを示唆。

■ speakingテストとproductive grammarテストの間に強い相関
■speakingテストと他のテストには弱い相関が見られた。

receptiveテスト、productiveテストの両方を説明要因として重回帰分析を実施。

■ receptive vocabulary, receptive grammarテストのcontributionは低く、有意差は見られなかった。

■ productive vocabularyテストのcontributionは低く、有意差は見られなかった。

■ productive grammarテストのcontributionは高かった。

■ これらの結果を受けて、和文英訳課題はスピーキング能力育成に効果的な指導法であることを主張。

■ 筆者は「中間日本語」へのパラフレーズの重要性を主張。
“Inter-Japanese means Japanese expressions which are between Japanese and English, and help Japanese learners to translate Japanese into English.” p.49

感想*日本人が英語を話す際の問題点はなるほどと思うことが多かった。和文英訳をスピーキング能力育成のために使用しましょうという考えは、現在自分が考えていることに似ている部分がある。この研究を読んで最初に思い浮かんだのは巷で話題の「瞬間英作文」シリーズ。コンセプトはかなり似ているのではないか。

ARELEに載っている論文、意外と読んでいないことに気づいたので、諸先生方の文章を読んで勉強しようと思います。

Park, S. (2010). The influence of pretask instructions and pretask planning on focus on form

プリタスクプラニング、プリタスク時の指示と学習者の発話中のfocus on formとの関連を調べた論文です。

実験参加者は韓国人大学生110名で英語学習経験は平均11年。用いたタスクは写真描写タスク(6コママンガの説明)で、この辺りは他の先行研究とほぼ同じといったところでしょうか。独立変数として、Instruction types (general instruction か specific instructionか)、planning conditions ( + planning / – planning ) 、language focus (lexical focus / morphosyntax focus )が用いられました。従属変数ではlanguage related episodes (LRE)が用いられました。この研究が他の先行研究と異なる点は、先行研究が発話のproduct面、つまり流暢さ、複雑さ、正確さを測定して来たのに対して、この研究では学習者のLREを測定したところです。

結果として以下のことが分かりました。

(1) 学習者はinstruction typesやplanningの有無にかかわらず、同程度の量のLREを表出した。

(2) instruction typesやplanningの有無にかかわらず、学習者はmorphosyntactic LREよりもlexical LREをより表出した

(3) specific instructionを行ったときの方が、general instructionを行ったときよりもmorphosyntactic LREをより表出した。

この結果だけを見てみるとinstructionの種類を変えることで学習者の注意の方向をある程度コントロールできる可能性が示唆されますし、実際著者もしているように思います。また、planningそのものはLREの量に影響を与えなかったことも新たな示唆と言えそうです。

McDonough, K. (2004). Learner-learner interaction during pair and small group activities in a Thai EFL context. System, 32, 207-224

久しぶりの論文レビューとなりました。最近自分が興味を持っている、インタラクションやペアワークの活性化についての研究です。

この論文は、学習者がペアワークやsmall group activity(以下グループワーク)中でインタラクションに参加することが、目標形式の表出の正確さの向上に役立つかを検証しています。インタラクション関係の研究となると、NS-NNSのものが非常に多いように思えますが、この研究は学習者間のインタラクションを調査した点で非常に興味深かったです。

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