タスク(成功?):チェーンレターで意見を書き合う

三浦孝・池岡慎・中嶋洋一(2006)『ヒューマンな英語授業がしたい!』東京:研究社で紹介されていたチェーンレターの活動を行った。

手法

学習者はまず、チェーンレターについての説明を受けた。この活動では、自分の意見を相手に伝えたり、相手から意見を聞いたりすることの楽しさを味わうための英作文なので、正確さを過度に気にせず、意見を伝えられるようにがんばって書くよう説明した。また、具体的な説明として、A3の白紙を一枚分け、トピックを自分達で自由に決めるよう説明した。この時、授業者の方から例をいくつか挙げた(Do you like English? Why or why not?やWhat’s your favorite music?など)。

トピックを決めるために2分ほど時間を与え、その後、自分が決めたトピックについて3分間で自分の意見を書いた。そして、書き終わった後、自分の紙を後ろの人へと手渡し、新しい話題について、3分間英作文を行った。同じ活動を複数回行い、所要時間はほぼ30分程度であった。

結果と反省

良かった点として以下のことが挙げられる。まず、授業の終わりに学習者が、クラスメートの意見が書かれた用紙を興味深く読んでいたことである。授業の終わり直前に自分の手元に戻ってきたのだが、休み時間も用紙を友達と見合いながら話をしている様子も少し見られた。そのため、一番の目的であった、英語を使って相手に意見を伝える楽しさを知るという点については成功したように思われる。また、中学生、高校生の書く活動となると、どうしても形式的な側面に多くの注意が学習者も教師も向けがちだが、今回はなんとか自分の言いたいことを表現とがんばっている様子もちらほら見られた。そして、最初は一つ書くだけでひと呼吸入れていたが、2つ目、3つ目となるにつれて、書くためのリズムのようなものがついてきたようで、慣れてきた学習者の中にはトピックを見て、スタートしてすぐにさらさらと書き始める人もいた。

反省点としては以下が挙げられる。まず、タスクを行うための時間設定に多少問題があった。高校1年生レベルの学習者を対象とした授業でこの活動を行ったため、一つの作文に対してもう少し長い時間をとってあげてもよかったかもしれない。実際何を書こうか考えていて、ペンが進まなかった学習者が見られたので、この点は改善すべきである。また、英作文が苦手な学習者に苦手意識を少しでも取り除いてもらうことができたかどうかは不明。今回は授業者側からの手助けが一切なかったので、状況や学習者のレベルに応じて、適切な援助をすることも十分考慮に入れる必要があるということを感じた。

まとめ

良い点、反省点様々だったが、コミュニケーションのツールとしての英語を楽しく体験できる、おもしろい活動を勉強することができた。今後は、より学習者に多くの表出を促せるような手法を考えながら、またこの活動を行うつもりである。

「タスク:成功」ペアであるトピックについて相手を言い負かす

トピック:お金と友達どちらが自分にとって重要か。

トピックは、当初、友達とボーイ/ガールフレンドのどちらが大事かというトピックだったが、15、16歳という年頃の学習者はあまりノッてこなかった。何人かの学習者が、友達とお金はどっちが大事という話をしていたので、そちらに変更。

手法:話題提示→5分間の準備時間→モノローグ形式でリハーサル→本番

まず、課題となるトピックとタスクの手法を学習者に提示。その後、話す内容を考えるために5分ほど準備時間を与えた。そして、モノローグ形式(ペアになり、相手に意見を聞いてもらう)で一度自分の考えをできるだけたくさん英語で話した。その後、3人のグループになり、相手を言い負かすタスクを行った。二人は発話者、一人はジャッジとしてタスクを行った。

結果と反省

議論型のタスクでは、相手の説明や理由付けに対して、即興で努力して答えようとしている姿が見られた。ジャッジをつけて、「勝負」ということを明確にしたせいか、楽しみながらも真剣にタスクに取り組めているようだった。

議論型のタスクへ持っていくまでの下ごしらえをしっかりしたことがよかったように思われる。最初の5分間の準備時間で、多くの学習者は自分のアイデアについて考えると同時にそれらを英語でどのように言うかを紙にメモしていた。また、その後の、モノローグ形式のリハーサルで、一度話す練習をしておいたおかげで、自分が言えること、言いたいことを学習者内で明確化したように思われる。

実際、他のクラスでは、5分間の準備時間の後、いきなり議論型のタスクへ持っていったが、何を言ってよいか分からず途中で止まってしまっている学習者、真剣に取り組めていなかった学習者が見られた。やはり議論形式という即興的なタスクは学習者に取って認知的な負担が大きく、ある程度話す内容面でも、英語の形式面でも、準備の段階を経ることがタスクの負担を大きく減らすことになるということを実感した。

英語科懇話会4月例会に参加して

先月は都合で参加できなかった英語科懇話会に参加してきました。今回は、高校の先生と高専の先生のご発表でした。

高校の先生のご発表では、音読に力をいれた実践を紹介していただきました。授業で音読を扱う際、段階を踏んだ指導を行ってこられた点、最後は必ずシャドーイングまで行う点など、徹底した音読指導をされているなあと感じ、非常に勉強になりました。また、音読を評価する機会を設けたり、「英語音読コンテスト」を学年単位で実施するなど、教師側のチャレンジ精神が感じられ、パワーをいただきました。

高専の先生のご発表は、名セリフを使用することが、語彙学習、文法学習に及ぼす影響を調査したものでした。名セリフというと、より文学的、哲学的な台詞を思い浮かべますが、この研究では、より生徒に親しみがある、漫画等から抜き出したものを使用していました。このご発表を聞いていて感じたことは、どうも想起、保持といった認知的なプロセスに大きな影響を及ぼすものは「感情」ではないかということです。何の証拠もないし、文献を読んだわけでもありませんが、感情を揺さぶられるようなことというのは経験上何年経っても色濃く覚えているものです。もしかしたらこれからのキーワードになっていくのかもしれません。

また、今回は、夜、大学時代のゼミの仲間数人が集まり、日々各自が抱えている問題等を話す機会がありました。同じ英語の教員として、率直に何でも話し合える仲間がいるということはとてもすばらしいことだと実感しました。