ポストタスクとしての要約活動

最近は読み物の教材を扱っており、リーディング中心の授業になっています。リーディングを行う際にいつも考えさせられることは、テキストの中に出てくる文法・語法などの形式面だけに焦点を当てるのではなく、如何にテキストのメッセージを大事にできるか、つまり、如何にメッセージを中心とした読みを促すかということです。そこで、今回は一通り読みの活動を終えた後のまとめとして、英語での要約活動を取り入れてみました。

今回取り入れた要約活動は、「ポストタスク」としての要約活動です。この活動はテキストをもう一度最初から通して読むためのきっかけを学習者に与え、テキスト全体の復習を自然と行わせることが可能であるように感じました。

この要約活動の目的は、学習者に英文を再度読んでもらい、テキストの復習をしてもらうためのきっかけを与えることです。ただ「復習しておきなさい」と伝えても、大半の学習者は、何をどのように復習していいのか分からないのが現実であると思います。従ってこちらからある活動を与えることで、自然と復習を促すことが必要なのだと思います。

一般的に要約活動は難しいと思われがちです。確かに目標言語を用いて、自分の言葉でしっかりとした要約をすることは、中学生の学習者には難易度の高い活動かもしれません。しかし、前述したように、この活動の目的は学習者に文章をもう一度読んで復習してもらうことです。そこで、以下の2つの手助けを学習者に与えました。それは①テキストの文章をそのまま使用してもよいということ、②分からない表現があった場合は、授業中に使用した解説プリントやノート類を参照してもよいということです。これらの手助けを与えることで、習熟度の高い学習者も、英語があまり得意でない学習者も、気軽に、そして真剣に要約活動に取り組めていたようでした。学習者は教科書を静かに読み直したり、時々、解説プリントをじっと見ながら何かを考え、そしてタスクシートにペンを走らせていました。また、グループ形態でこの活動を行っていたため、学習者同士相談しながら活動を進めている場面もしばしば見られました。

この要約活動を行うためには、学習者はテキストを読み直し、どのような話であったかを思い出す必要があります。また、テキストの文章をそのまま使用する学習者も、もう一度テキストを読み直し、どの文が要約に必要で、どの文が必要でないかを見極める必要があります。言い換えれば、学習者は単なる文法、語法の復習としてではなく、メッセージを中心とした読みを行わなければなりません。また、分からない表現に出くわしたときは外的なリソースに頼ることができるため、形式と意味のマッピングを促進することができる可能性もあります。学習者が自らの中間言語と、目標言語との間のギャップに気づくことができるので、自律的なフォーカス・オン・フォームが促される可能性があるように思われます。

要約活動は難しい活動だと思われがちですが、学習者に手助けを与えることで、テキストの文章を意味的に処理させるための活動として非常によい活動であると思われます。また、外的なリソースを参考にすることを許可したり、他の学習者と相談したりすることで、意味的な処理とともに、形式と意味のマッピングを促進させることができる可能性もあります。

最後は感想ですが、学習者は、難易度が高くても、「救いの手」というか、いわゆる、手助けが用意されている活動には真剣に取り組むのかなあと感じました。

英語教育懇話会2月例会に参加して

福井県の英語教育懇話会2月例会に参加してきました。今回は高校の先生と大学院で研究されている方の発表で、研究、実践ともにやる気、元気をいただいてきました。

高校の先生の方の発表では、リーディングの教材中に込められているメッセージに如何に焦点を当てさせるか、如何にメッセージ中心の読みを実現していくかの手だてを勉強させていただきました。英語はコミュニケーションのためのツールであり、自分の意見・考えを相手に伝えたり、相手の意見・考えを聞くための手段であるならば、教科書の文章に対しても、形式のみの指導で終わるのではなく、書き手とのメッセージのやりとりが必要だということはどの先生方も重々承知されているのではないでしょうか。また、メッセージ中心であるからこそ、英語の学習がinterestingになるのではないかとも考えます。その意味で、自分の授業にも、そのエッセンスを取り入れてみようと思うことがたくさんありました。

大学院生の方の発表では、recast(言い直し)の効果についての発表でした。しばらくrecastについての論文を読んでいなかったせいで知らなかったのですが、現在では、recastの種類も系統的に区別されて扱われているのですね。勉強になりました。論文の方もぼちぼち読みながら勉強する必要性を感じさせてくれました。

このような研究会に出ると、「自分も明日からまたがんばろう」という気持ちにさせてくれます。また、研究会に来られる人皆さんが、よりよい授業を目指し、そしてよりよい研究を目指して日夜努力されている人ばかりなので、密度の濃いお話ができることも多々あり、本当に刺激になります。すばらしい先輩方に負けないように、明日からがんばっていかなくてはいけません。

福井県英語科教育懇話会はこちらから

http://www.f-edu.fukui-u.ac.jp/~mdate/

学力差に対応するために:複数の目標を設定する

どのクラスに入っても、大なり小なり学力差は存在すると思います。教師はどの教科、どの授業でも学力差にどのように対応するかの答えを持っていないと、学習者全員に取っての学びの場を提供できていないことになると思います。

最近、授業で、教科書を扱う際に、タスクとともに、解説のプリントを、タスクシートの裏に印刷するようにしました。この「解説」プリントには、言語形式面の説明を詳しく解説したものをのせていますが、これが中々好評(?)なように思えます。少なくとも、教科書の中身をこちらから解説するよりは、自発的に学習しているように見えますし、問題が多少難しくても解説を見ながら空欄を埋めようとする努力が見られています。

学習者の中には、解説を見てタスクができる学習者もいますし、解説を見なくてもできる学習者もいます。また学習者は一人一人分からない点も異なります。そういった事情に上手に対応するためには、「手引き」というか、学習の助けになるものが必要なのだと思います。一つの活動を行うときに、「何も解説を見ずにタスクを行うことができる」という目標と、「解説を見てタスクを行うことができる」という2つの目標を設定すると、どの学習者も自分の習熟度レベルに応じて学習するようになるのじゃないのかなあと今日考えていました。

同様に、音読をするときも、レベル別に相互評価をするシステムを取り入れてみました。具体的には、グループになり、音読評価シートを配る。評価の基準は明確にしており、自分の実践では、

①教科書にフリガナを振ってもいいので、なんとか教科書を読みきることができる、

②教科書に何も書き込まないで、なんとか教科書を読みきることができる。

③教科書をスラスラと読むことができる。

④教科書をなんとか暗唱することができる。

⑤まるでネイティブスピーカーのように暗唱することができる。

というレベル設定をしました。最後のレベル5は発音や、イントネーションを意識することと、楽しんで音読することの両方を目的としています。そして、学習者に10分間時間を与え、その中で相互評価をさせるという実践をしました。学習者は10分間を自由に使うことができ、すぐレベルチェックに取り組む生徒も入れば、何度も練習した後に、友人に音読を聞いてもらっている生徒もいました。

ある程度学習者に自由を与えた活動だったので、上手にいくかどうか不安だったのですが、この活動でも、学習者は自分のレベルに応じて、自分の中の目標を達成できるように努力しているようでした。レベル④までクリアした学習者は、楽しそうにレベル5に取り組んでいました。周りがざわざわとするので、普段は一生懸命音読しない学習者もがんばって取り組むことができたみたいです。

複数のレベルを設定するということは、言われてみれば当たり前のことなのかもしれませんが、実際にやってみて、思った以上にうまくいったなあと思いました。