プロジェクト型のタスクを試みる

3学期の授業の目標の一つに、「英語を使って意味あるメッセージを伝えつつ、達成感を与える」ということがあります。特に、今学期は、担当クラスで学習者同士が協力して一つのプロジェクトを達成していくようなタスクを設定し、全員の前で、英語を用いてプレゼンテーションすることになりました。

この、プロジェクト型の学習を授業に取り入れた理由は2つあります。1つ目は、英語を用いてメッセージを伝える必然性のある場面を作るということです。2つ目は、学習者同士が協力して、1つの大きなタスクに挑戦することで、達成感を味わう、ということです。自分の中では特に後者の理由の方が強く、ただ漫然と英語の授業を受けるのではなく、学習者同士がタスクについて話し合い、議論を重ね、資料や原稿を自分たちで準備し、協力してプレゼンテーションを完成させる、そして、終わった後の達成感をグループのメンバーと一緒に味わう、といった経験をしてもらいたいと思っています。

これは、自分の、学会での発表と重なる部分があります。時間をかけて準備し、大学や高校の先生方の前でプレゼンテーションをし、様々な質問をいただき、発表を終えた後のあの達成感は何事にも代え難いものだと、学会の発表をされた方なら理解していただけると思います。

具体的な準備の仕方ですが、木下(2003)のLong Term Projectの実践を取り入れて、授業の最後の15分をプロジェクトの時間にあてます。(残りの時間は教科書中心の授業です。)大体1つのプロジェクトに5〜8回の時間をとります。その間に、役割分担、原稿の下書き作り、資料(ポスターや絵など)作り、リハーサルといった作業を経て、最後にグループごとにプレゼンテーション、という流れです。

ちなみに2学期には、1年生では、「世界の中学生の生活を調べよう」と題して、各グループごとに異なった国の中学校生活をしらべ、一枚のポスターを作りました。2年生では、「世界のクリスマスについて調べよう」(ちょうどクリスマス前だったということもあり)と題して、異なった国のクリスマスを調べ、グループでプレゼンテーションをするというタスクを行いました。しかし、このときには、学習者のアウトプットに対して、レベルの高いフィードバックを与えてしまったこと、学習者が難しい表現を簡単に言い換えるようなストラテジーを持っていなかったこと、他のグループの発表を聞く必要性のある状況を作っていなかったため、最後の発表のときに、聴衆が発表者の言うことを理解できない、聴いても聴かなくても学習者は何もする必要がない、という状況に陥りました。

こうした反省をふまえて、今回は、最後の発表時に聴衆が、発表を聴いて、自己表現をしなければいけないようなタスクを設定しました。そのことにより、学習者は聞くことの動機付けを高めることができたらなと思います。

段階的な指導重要性を再認識

公立の中学校で教えていると、生徒の英語のレベルは様々です。一つのスピーキング活動を行う前にも、事前の準備が欠かせないということは、現場の先生方の直感でお分かりいただけるのではないかと思います。

先日、比較級を学習したのですが、比較級の文法事項を明示的に説明した後に、三問ほどの簡単なドリル形式の問題を取り入れました。板書やノートを見ながら2、3分で行う活動なのですが、学習者が自ら取り組まなければいけないこともあり、その後の活動に非常によい好影響を及ぼしたようです。

その後、「○○だろう」という、質問(例:数学と国語ではどちらが簡単?)などの質問を与え、当てはまる方に○をつけさせ、後に、その内容についてペアで話をするというスピーキング活動を取り入れました。この際にもモデルを用いてモデルに倣って話をしたのですが、ある「型」を取り入れることで、学習者の中におちていくものがあったようです。

これらの実践から、やはり、初期段階では、単純な練習から、徐々に段階を挙げていく、sequencing tasksの概念が必要ではないのかと考えさせられました。高島(2005)の分類からは、ドリルで始まり、TOAからTAということになるのかもしれませんが、段階的な指導というのは、全く初期の学習者には重要な意味を持っているのだなあと再確認できました。もちろんTOAやTAの段階に留まらず、Task活動まで持っていけるといいなあという希望はありますが。

高島英幸(2005)英語のタスク活動とタスク 第1章 読みました

タスク活動で有名な高島先生の本を今更ながら読んでみました。先月講演会に参加したときのお話が非常に有益なもので、その日以来、どうしたら生徒に英語を使って活動してもらえるかどうかを考えています。本書の第一章では、従来のコミュニケーション活動と呼ばれるものを細分化し、タスク、タスク活動、タスクを志向した活動の3種類に分類しています。 上に挙げた順に、意味、伝達重視の活動、言い換えれば、形式定着を重視した活動ではない、ということになります。3つの活動ともに、課題解決、達成を目的とし、意味伝達を目的としていることが共通点であるそうです。

これらの活動の分類をふまえて、自分の授業を振り返ったとき、直感ですが、日本の中学生では、どのレベルまでできるようになればよいのか考えさせられます。一口に日本の中学生といっても、置かれている環境や英語のレベルは異なっているので、一概には言えませんが、少なくともタスク活動までは持っていきたいなあというのが本音です。もっと欲を言えばその上を目指したいですが。

ただ、日本の中学現場では、基礎基本の定着ということも非常に熱心に叫ばれているので、そちらとのかねあいも考えなくてはいけないかもしれません。 本書でも言われていることですが、ただ単にコミュニケーション活動を行っていても学習者に力がつきはしないでしょう。教師の側が、最終的にどのような能力を持った学習者に育てたいかということを明確にし、その上で、その目標を達成するために、適切な活動を織り込んでいかなくてはいけないでしょう。そのためには、パターンプラクティス的なドリルやエクササイズのような活動も考慮に入れていく必要があると思います。

もう一つ考えることがあるのですが、このようなタスクはとにかく単発的になりがちです。コミュニケーション能力、そして、いわゆる基礎基本の定着という点を考えるならば、同じ目標言語を用いた活動をどれだけの頻度で行えばよいかということも教師の側は考えなくてはならないのかもしれません。自分の授業でも一つ一つの授業でコミュニケーション活動を取り入れても、次の時間になったら学習者は忘れているということもよくあることです。タスクの繰り返しということも実践では非常に大事になってくると思います。

とにかく一章目で早くも色々と考えさせられました。